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これから、私たちにできること
食物を通しで、私たちの食卓と六ケ所村の問題がつながっていることが見えてきました。
六ケ所村の問題は私たちの未来を考えること、と知ったいま、何かできるのか、考えでみまし
ょう。
六ケ所村ラプソディー』の上映会を開いた、根本きこさんと廣瀬裕子さんにもメッセージをいた
だきました。

 チェルノブイリの事故をきっかけにヨーロッパでは反原発の流れが加速しました。スウェーデ
ンでは、原発全廃に向け、具体的な廃止目標が定められています。イタリアでも運転中のすべ
ての原子力発電所の閉鎖が決定。同時に、自然エネルギー政策が促進。とりわけ、自然エネ
ルギー事業の進むドイツについて鎌仲さんは語ります。
 「ドイツで脱原発ができたのは簡単なことなの。自然エネルギー促進のための法制度が整備
されていて、自然エネルギーが、通常の電気料金よりも安く使用できるよう整っています。電気
使用の高い時間帯の企業の電気料金はさらに高くする。だから、風力発電や太陽光発電が
倍々と増えています」
 その結果、ドイツの自然エネルギー産業全体の雇用は増大したのだそう。ただ反対を唱える
のではなく、それに代わる代替エネルギーを選択し、政策を後押しするのは、ほかのだれでも
ない国民です。
 さらに、身近なところから小さな行動を起こすことを忘れてはいけません。それはおそらく、ひ
とりひとりが暮らしを見直すことから始まります。電化製品に頼る家事、一日中つけっぱなしの
電気、寒すぎ・暑すぎのエアコン……。
 便利と引き替えに、私たちや地球、未来の子どもたちにハネ返ってくるツケがいかに大きな
ものか、六ケ所村の問題でみえてきました。
 そして、少し外に目を向けて、考えてみることも必要です。24時間明るいコンビニ、眩しいほ
どの電車の車内、街にあふれる電気が本当に必要なのか。もっといえば、多くの電力を消費
する企業を含め、これ以上、経済優先で走りつづける必要があるのかどうか。
 「大事なのは想像力」。鎌仲さんはこういいます。
 「ビルだけが林立したところに人間は生きてゆけないとようやく気づいた。いまこそ、美しい森
や海を強くイメージして、人間と自然がふれあいながら”懐かしい未来”をつくるとき」とも。
 想像してみましょう。−−−六ケ所村で安心してお米をつくりたいと願う農家の人の気持ち
を、私たちの子どもや孫が、増えつづける核のゴミの恐怖に震えない未来を。その瞬間から私
たちの行動は変わるのではないでしょうか。

八甲田連峰の雪解け水や十和田湖など、青森は清らかな水の宝庫

「チャーミングなエネルギー」フードコーディネーター・根本きこさん
 coyaで『六ケ所村ラプソディー』の上映会をした。
 監督の鎌仲ひとみさんにもいらしていただいての会だった。
 それまで、この映画を見たくとも見る機会を逃しつづけ、「だったらいっそ、うちでやろう」と決
めた。
 当日、coyaに見えた初対面の鎌仲さんは、想像していた社会派ドキュメンタリー映画監督、
という堅さはみじんもなく、気さくで軽やかなやわらかい笑顔が親しみやすい女性だった。
 「六ケ所再処理工場反対!」と声高に叫ぶのではない。ここの稼働に加担したのは何を隠そ
う私たちなのだ、という気持ちを、見終わってからずっとぬぐえないままでいる。
 無知は、怖いし、やるせない。
 素直に出てきたこの感情を忘れないように、毎日、少しでもこのことについて考えるよう自分
に課している。
 どうしたら地球にやさしいエネルギーというものを生活に取り入れられるのだろう?
 「いくら家庭が省エネと頑張っても、企業がその気にならないとエコエネルギーなんて日本に
導入されないよ」などという人もいるけれど、「自分たちにできることをすぐにやらないと」という
気にさせるのが、この映画なのだ。
 あの日から何かが変わった。いろいろなものが天秤にかけられているような気がする。「どっ
ちが持続可能?」と。

「ひとりひとりの問題として」作家・廣瀬裕子さん
 首都圏に暮らしていると、六ケ所村は遠いところのように思います。何か騒いでいる……そ
の程度に感じている人もいるかもしれません。
 でも、そこで起きていることは、遠くの小さな村の話ではなく、私たち自身の話です。映画を見
ると、そのことがわかります。
 そこで暮らしている人たちの声から聞こえてくるのは、「私たちは、これからどうするのか?」
「何を選んでいくのか?」という問いかけです。
 気持ちのいい暮らし……。
 それは、安全という前提の上に成り立つものです。
 放射能で汚染された土地では、気持ちよく生きていくことはできません。
 首都圏で暮らす人にエネルギーを供給するため、原子力発電所はあります。
 私たちの暮らしを支えるために国が考え出したもの、それが、原子力発電所です。
 そして、これからなくなっていくエネルギーを補うという名目でつくられたのが、ちいさな村につ
くられた危険な工場です。
 まずは、知ることです。
 何が起きているのか、それによって得られるメリット、デメリット。
 それを知ったうえで自分ができることを考え、身近な人に伝えていくことが始まりです。

資料提供:「六ヵ所再処理工場」に反対し放射能汚染を阻止する全国ネットワーク
参考資料:『ロッカショ2万4000年後の地球へのメッセージ/STOP-ROKKASHOプロジェクト
       (講談社)


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